ザ・ファブルは、裏社会の人間関係の厳しさを教えてくれます
ザ・ファブルは、裏社会の人間関係の厳しさを教えてくれます
ザ・ファブルを読んでいて、一瞬ゾクッと驚いてしまうことがたくさんあります。それは、真黒組の組員たちの人間性にです。関西が物語の舞台ですから、人情味があるように見えますが、やはり、ヤクザ社会を描いていますから、人間関係がきつい。
主人公の佐藤明は、基本的に仕事以外はやさしい男です。
人殺しなどは、仕事以外では絶対にやりません。しかし、真黒組の組員は、違います。いっしょに仲良くシノギをやっているようで、いらなくなると突然、殺すようなことを組員同士でも平気でやります。
幹部でのちに、組長となる海老原はさすがに、同じ組の組員には、やさしく面倒見のいいところがありますが、他の組員は、非道なところがあります。
これは、社会の裏を見てきた人間通の作者、南勝久氏の1つのメッセージのように思えてなりません。
「裏社会の人間たちと付き合ってはいけないよ」と読者に警告を与えてくれているみたいです。ザ・ファブルには、そんな、警告ともとれるセリフがたくさん登場します。
裏社会の住人の怖さを教えてくれるシーン
ザ・ファブルという作品は、2巻までは、佐藤明という人間の人物紹介と、関西に移住するまでの経緯を説明する話になっています。3巻から、本格的に裏社会の人間たちと佐藤の衝突が始まります。
3巻から、さっそく、15年もの懲役を終えた小島という凶暴なヤクザが、出所し真黒組を引っかきまわします。
礼儀がなっていない、喧嘩もできないのか、といろいろ自分の部下たちを小島は、叱責します。そして、自分の兄貴分にあたる砂川の風俗のシノギに手をつけます。
その手口がびびってしまうのですが、砂川のシノギの風俗部門を仕切る企業舎弟の男をいきなり、ビルの4階あたりから突き落とします。
その後、少額の借金で因縁をつけてその男を射殺します。
ヤクザの企業舎弟になるというのは、こんなに怖ろしいのかと、この一連のシーンを見ていると驚いてしまいます。
その後の展開にも驚き
砂川は、自分がシノギにしていた風俗の責任者が殺され、少しは悲しむのかと思って読んでいると、全くそんなことはカケラもないことが解ります。
この男は、自分の企業舎弟が殺されたことよりも、自分のシノギを小島に荒らされたことに激怒。
小島が自分の企業舎弟を殺した事実をつきとめて、小島を殺そうとします。
その後の展開に驚きなのですが、小島を殺すことに失敗した砂川は、自分に忠誠を誓っていた舎弟を証拠隠滅のために射殺します。
おいおい身を粉にして自分のために、命がけで闘ってきた舎弟をそんなに簡単に殺してしまうのか、とこのシーンには心底、驚きました。
スパイアクションのような、迫力満点の戦闘シーンが、ザ・ファブルの醍醐味なのですが、こういった裏社会の冷徹な現実みたいなところも非常にこの漫画は参考になります。